売りのプロを目指す店長講座


1.売上げは出来るものでなく創るもの

店長は売上げを創るために居る
最近、売れない言い訳をするのが上手な店長を見かけます。売上げ不振の理由を聞くと「景気が悪いから」「客数が落ちているから「天気が悪いから」など、まるで他人事のような発言です。挙句のはてには「ショッピングセンターの販促に問題ガある」などコンサルタントもどきのような口振りです。それなら店長は要りませんよ。店長の仕事は様々なマイナス要因をプラスに変えるために配属されているのですから。

マイナス要因をプラスに変える方法ですが、例えば景気が悪くても売上げを落とさない方法は、景気の影響を受けないお客様を対象に品揃えを変えていけばいい事ですし、
客数が落ちてきたら丁寧な接客に務め、客層を上げていけば売上げをアップさせることは可能です。上客は客数の多い店には行かず、静かな店を選ぶからでしょ。

このように考えるとマイナス要因は全てプラス要因に変えられます。ヒマなのはマイナスですが、お客様を大切に出来ると考えればプラスですし、近くに競合店に売上げを食われたら、自店のどの商品部門が弱くて、どのアイテムの売上げが落ちたか分析すれば、自店の弱みと強みが明らかになるではないですか。日々の売上げデータを元にして、対応を考えれば売上げを落とすことは考えられません。

売上げは待っていて出来るものではありません。創意と工夫を重ねて創るものですよ。
これから何が売れるか予想して売場の体制を整えておくのも一つの方法です、バッターボックスに立つのと同じでシュートが来るのか、フォークが来るのか予想してバッターボックスに立たなければ、ヒットは打てるハズはありません。キャツチャーミットにボールが納まってから、あっカーブだったでは間に合いっこありません。

世の中が豊かになってみんな緊張感を失ってしまいました。「不況だから売れなくてもしょうがない」「暖冬だからブーツが売れないのは当たり前」「競合店がバーゲンを仕掛けたから売上げを落とすのは当然」と他人のせいにする人が増え続けています。店長自ら「売上げを創る」努力をしなければ販売員も同様です。日本中に「売上げ不振感染症」が広がって、売上げを落とし続けているのが現状なのです。

売上げを落とすのは店長自らの姿勢に問題があると考えて下さい。あなたの店に「売上げ不振感染症」は蔓延してはいませんか?


売上げを創る基本は売上げ構成比率≒売り場面積比率
このホームページには本日の売上げ予報と、今週の売上げ予報、中期3ヶ月の売上げ予報が掲載されています。活用方法は先ず中期の売上げ予報の商品部門別売上げ構成比率から、これからどの商品部門の比率が高まるかを見て中期の売場変更を考えます。次に今週の商品部門別売上げ構成比率の推移を見て、今週は売場をどう動かすかを決めます。最後に本日の売上げ予報を元に今日の売場の動かし方を決めるのです。

よく「ウチは店が小さいから品揃えが満足に出来ない」とこぼす店長がいますが、そんなことはありません。大きいほど有利なのでしたらGMSや巨大百貨店の業績が好調なハズでしょう。むしろ小さいほうが有利なのは、商品を絞り込めて無駄のない品揃えが出来るから商品ロスを減らすことが可能になります。小さいことは決してマイナスではなくプラスなのです。売れ筋商品はほんの一握りしかありませんからね。

売り場面積は限られています。限られた売り場面積を最大限活かすことを考えれば、常に売上げ構成比率に売り場面積を合わすことです。お客様にとって店を選ぶ基準は「欲しい靴が沢山ある」ことでしょう?「欲しい靴」が商品部門で、「沢山ある」が売場面積や陳列比率なのです。

売上げ構成比率は緩やかに変化するものと激しく変化するものがあります。商品部門(レディス、メンズ、スニーカー)は緩やかに変化しますが、商品スタイル(パンプス、サンダル)と、商品アイテム(単品)は日々激しく変化します。それに合わせて売り場面積や陳列比率を変えていくのです。

商品部門のメンズとスニーカーは相関現象にあります。メンズの売上げ比率が高まればスニーカーの売上げ比率は低下し、スニーカーが売れる時期はメンズの比率は下がります。それに合わせて緩やかに売場面積を変えて行きます。一方、商品スタイル・アイテムは気象条件よって激しく変わります。例えばレディスサンダルは最高気温が25度の夏日にはレディス部門の売上げ構成比率の50%を超えますし、30度の真夏日には70%に達します。気温の乱高下する4月には、毎日の天気予報を参考にして売り場面積の変更をはかりましょう。

また地域条件によっても変化します。大企業が存在する都市の運動会シーズンには、運動会の開かれる一週前の日曜日にはランニング、ジョキングが良く動きますし、高等学校が沢山ある地域は、合格者の父母説明会の開かれる日に、学校指定靴が大量に売れることもあります。特定アイテムの売上げ構成比率は瞬間的に上昇することがありますので、それに合わせて売り場面積も大拡張させなければなりません。


売上高は陳列密度とプライスゾーンを変えるデータ
売上高のデータは売り場面積当たりや、陳列間口当たりの陳列量を決めるのと、プライスゾーン(価格帯)を変えるデータです。売上高の多い週や、多い日には陳列量を増やし、少ない日は陳列量を減らします。この基準は1日の売上高が1坪当たり8千円を超える日、又は陳列間口1間(1800㍉)当たり8千円を超える日には陳列量は60万円(売価換算)に増やし、5千円を割る日には同じく40万円に減らします。

売上高によって陳列密度を変えるのは、日によって客層が変わるからです。よく売れる日には客層が下がりますので陳列量を増やし、ボリュームプライス商品を多く並べます。お客様には失礼ですが低い客層は量と低価格を好むからです。売上高の少ない平日には陳列量を下げ、空間をとってゆったりと見せるようにします。プライスも上げてベタープライス商品を多目に並べるのです。ヒマな日には客層が上がり上客は量を嫌い質を望むからです。

このように考えると、店長にとって売上げデータはとても大切なことであることに気付かれるでしよう。売上げデータは商品部門だけでなく、スタイル(パンプスやサンダル)や主要なアイテム(ブランド)も取るようにしましょう。POSでなくてもレジ分類だけで取れますし、手作業でも十分です。意欲さえあればデータは幾らでも取れるのです。難しい時代には計器を頼りに飛行しなければ遭難は必至でしょう。


客層とはプライス、テースト、エイジのこと
客層に合わせて品揃えを変えるのは、品揃え型の靴専門店はもとより、ブティック型、
セレクト型も同様です。客層を外したらいくら頑張っても売上げを創ることは出来ません。客層とは第1にプライスゾーン(価格帯)のことです。第2はテースト(好み)のこと、クラシック好みとかトラッドが好きなどの違いです。第3はエイジ(年代層)です。3番目のエイジは境目がなくなりつつありますが、ベビー~キッズとシルバーはまだ残っています。この違いをはっきり捉えて売場の対応を図るのです。

客層はシーズン初めとシーズン末、平日と休日、時間帯別によって変化します。シーズン初めとヒマな平日に来られるお客様は上客で、テーストはファッショントレンド商品の高価格品を求められますし、シーズン末と休日にはバーゲンを好まれるお客様が多くなります。また午前中はシルバー、午後はティーンズ~ミセス、夕方からはヤングとキャリアミセスが増えるのは、皆さんよくご存知のハズです。客層はシーズン、曜日、気象条件、時間、地域の行事などで刻々と変化しますから、売場も常に変えて対応しなければ、お客様の失望を買うのは云うまでもりません。


豊かな商人人生を目指すのなら豊かなお客様へ近付く
皆さんは何のために商人を目指しているのですか。靴の商いを通じて豊かな人生を送るために靴業界に入られたのでしょう。豊かな商人人生ってなにっ? 私はヒマとお金と健康の3条件を備えていることと考えています。本来は健康が第1ですが、ヒマとお金を失うと健康も害するからです。中には「お金はなくても心は豊か」な方も居られますが、その人は道を極めた宗教家と言えましょう。

豊かな商人を目指すにはそんなに難しいことではありません。ヒマが欲しければ、ヒマを持て余すお客様を客層にすればいいし、お金が欲しければお金持ちと付き合えばいい。健康になりたければ商いの対象をゲンキな人にすれば良い。早い話ヒマと、お金の有り余る、ゲンキな上客を固定客にすれば豊かになれるのです。GMSはなぜ元日から営業をするのか、CVSはどうして24時間営業しなければならないのか、皆さんよ~く考えて下さいね。


楽しい商人人生を送るのなら楽しい店にする
「一生懸命頑張たって売上げは増えない」のは商いを楽しんでないから。頑張るのは尊いことですが、それが『売りつけられるのでは』と感じられて、お客様を遠ざけてしまうのです。楽しくなければ店ではない。楽しくなければ靴ではない。楽しくなければ接客ではないのです。お客様から『楽しそうな店だな』と思わせてこそお客様の方から寄ってきます。店長はエンターティナーである時代が来ました。

商いを楽しむ方法に3つあります。第1は繁盛させる定石を学ぶこと。第2は商いの延長線上に遊ぶこと。第3は趣味の延長線上の商いを求めることです。第1はこのホームページを良く勉強していただき、繁盛させるコツを身に付けて下さい。店が繁盛すればあなたのお給料は上がるし、社長から褒められるし、お休みも取れるようになりますから、「商いって結構楽しいものだな」って思うようになるでしょう。

商いの延長線上で遊ぶことは、例えばアウトドアを売るのには、アウトドアスポーツを楽しめば、アウトドアの「うんちく」に詳しくなり、アウトドアの売り方が上達します。第3の趣味の延長線上に商いを求めるのが一番理想的ですね。パーティ好きの方がパーティ・ショップを開けば、毎日楽しくってしょうがないでしょう。

商いを繁盛させるには商品に関する説得力を付けること。ご年配のお客様にコンフォートシューズを売るのに、販売員が履いたこともない靴を「履きよいですよ」って説明しても、お客様から「そうかな?」って見抜かれてしまいます。店にある靴は積極的に履いてみて体験をすること、その経験を元に接客をすれば楽しく売れるでしよう。


お客様は店長自ら動員する
売上げデータを元にして売場に「売る」体制を整えても、お客様が来店されなければどうにもなりません。店は口を開けてお客様を待っていても、お客様は降っては来ませんから、店長自らお客様を集めるしか方法はありませんね。もうチラシやTV宣伝ではお客様を集めることは困難になりましたし、お金ばかり掛かって効果がイマイチなのは店長も十分ご存知でしょう。それではどーする?

小さなハンドビラをパソコンで作って、商圏内の事業所や住宅を戸別訪問します。「今度開店したアジアリング靴店店長の水飼です」とご挨拶をしながら1軒1軒回って、簡単な修理や汚れ落としを無料でサービスをします。留守宅には「お邪魔しましたがお留守でお会いできず残念でした。ご来店されたら水飼が目いっぱいサービスに努めます」と書いたメッセージカードを、郵便受けに入れときましょう。

これをず~っと続ければお客様は確実に増やせます。来店した客様の内で、お買い物をされたお客様にはお得意様名簿に記入していただきます。お得意様名簿のフォーマットは販売員講座内にありますからダウンロードしてお使いください。大切なのは年配のお客様にはお電話をお掛けしても良いか否かをお聞きすることと、若いお客様にはメールアドレスをお聞きして、メール配信の諾否を確認することです。

電話によるサービスコールはお買い上げ直後にします「本日はわざわざご来店いただきありがとうございました。お求めの靴はお気に入りましたか?」若いお客様には同じようにeメールを送ります。大切なのはお買い上げ直後ですよ。忘れた頃に出しても迷惑コール、迷惑メール扱いにされるだけです。お客様への配信は45日に1回位"付かず離れず"の関係が理想的ですね。サービスの内容は売り込みではなく、売った後の靴の状態を心配すること、この配慮がお得意様を感激させるのです。

お得意様を喜ばせれば固定客になりますし、お客様の動員も可能になります。「○○様お気に入りのP&Dの新製品が入荷しました。後ほどサンプル写真をお送りします」のサービスコールや「○○君が夢に見ていたヴィンテージ物のアディダス・アドベンチャーシリーズの画像送ります」等のeメール配信が出来るじゃあないですか。固定客を沢山抱えれば、売上げを創るのは自由自在なのです。

「売れない」「ヒマだ」と嘆いていても誰も助けてくれません。放置すればリストラの対象にされて、店と職場から追われてしまいます。自分の生活を守るのは自分しかいないのですよ。売場を積極的に動かして店を売る顔に変える。お客様を積極的に動員して店を繁盛させる。これは店長の仕事なのです。
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