水飼 茂の経営提言 (2019年1月15日掲載)


IT時代に備える靴・バッグ業界



 現在、靴小売店は年間400店のペースで減り続けています。バッグ小売店の減少率は、靴店ほどではないものの、減り続けているのは靴店同様です。原因は競合過多ではなく、IT革命による価格破壊です。更にこれから到来するAI革命が産業破壊を進めます。
靴・バッグ業界はどのように対処するか、その対策と未来を拓く方法を考えてみました。


1 ファッション市場を激減させたIT革命
 IT革命とは、コンピュータと通信などの情報技術(IT=インフォメーション・テクノロジー)の発展により、社会の様々な側面に急激に押し寄せる、巨大な変化を起す産業革命を指します。従来起きた農業革命と工業革命と根本的な違いは、市場を拡大させる革命と違って市場縮小革命です。ITが国境や業界、職種などの境目を無くして、超効率化を進める過程でムダを省き、価格破壊を進める新産業革命なのです。

 特に価格差の大きな商品は、国境を超えて大量に流入して価格破壊を進め、アパレルの市場規模をバブル時の半減、中でもレディスアパレルの市場規模は、4分の1へ激減しました。低価格業態のユニクロとしまむらの1人勝ちの様相です。そのユニクロやしまむらのも、リアル店舗はネット通販に敗れて、存続困難に晒されるでしょう。靴店は価格破壊によって、バブル時の18,771店から8,616店へ激減しました。



2  衰退化の原因
① 低価格体質
 商品は低価格品ほど、造る・卸す・売るのがラクです。安ければいいがもたらした同質化と、売れ筋を追う展開が、経営者・幹部・売場スタッフの能力を低下させ、「何も知らない」「何も教えられない」痴呆症の集団化をさせました。更に低価格化は客層の劣化を進め、現場を荒廃させました。価格=客層なのです。高価格客ほど上客で、高価格客ほど知性と教養を備えています。ビジネスは単に売れればいいのではなく、お客様から磨かれて商いを精熟させるもの。高価格体質へ移行させる理由がここにあります。

② 立地依存体質
 売るのがラクな道を歩んだため、人通りの多い立地へ依存して、SC(ショッピングセンター)への出店が増えました。ところが客数の多い立地ほど下層客を集めます。その結果ラクに売れる品揃化を進め、靴専門店のMD力を低下させました。かって名門アパレルの「鈴丹」や「タカキュー」は、SC出店を選んで消滅しました。その本体のGMS直営靴売場さえ、売上不振に陥っています。靴専門店はSC出店を避け裏通り路面を選び、お客様を自ら集める力を取り戻したいものです。

③ 川上依存体質
 小売店はメーカー・卸・ブランドに頼る習慣が抜けません。百貨店は問屋からの消化仕入れ、問屋からの派遣社員で賄うノーリスク経営が表面化して、有力都市百貨店の閉店が相次ぎました。靴・バッグ専門店も同様です。ブランドに頼る体質が接客力を弱め、靴専門店は毎年400店減り続けています。このままの状態が続けば靴店は、20年後に消滅する絶滅危惧種なのです。靴・バッグ専門店は自ら商品を企画し、自らブランドを確立する、PB化を進めたいものです。



3 AI革命が靴・バッグ業界をどう変える
 AIとはArtificial Intelligenceの略で、人工知能のことです。人間の知能をコンピュータが学んでシステム化させ、ロボットに搭載する時代が来ました。ロボットが人に変わって仕事をする時代が、もう目の前に来ています。靴・バッグ業界はどう変るでしょうか
① IoT時代の到来
 IoTとは、Internet of Thingsの略で、あらゆるモノがインターネットを通じて、パソコンやスマホなどに繋がり、情報のやり取りが出来るようになる、新たなネットワーク社会が実現すると期待されています。製造現場ではI Cタグ(無線荷札)が生産工程の進捗度を把握して、最適な作業方法を探り、生産効率が劇的に改善されるでしょうし、小売店現場では来店客の動きをA I(人工頭脳)が捉え、最も効率の良い売場ゾーニングと、商品レイアウトをパソコン上に表示されるようになるでしょう。

② AIとIoTによる業界の近未来
・現在-------------靴のインソール内にI Cタグを挿入して、徘徊老人や幼児の位置情報を監視
          者のスマホで現在地を特定
・2022年---------AIロボットが接客するA I靴店とAIバッグ店が都市部から発生
・2025年---------靴とバッグ内のI Cタグと走行中のAI自動車と交信、車に撥ねられる交通事
          故は皆無へ
・2030年---------靴を履くだけ、バッグを持つだけで血圧や心拍数から体調を測る靴やバッグ
          が開発される
・2035年---------手に持つAIバッグと、履いたAI靴のICセンサーが体調異変を感知、掛かりつ
          け医のPCやスマホへ送信

※ 電子情報技術産業協会、EY総合研究所、新エネルギー技術総合開発機構のデータから作成

③ AI時代に求められる「芸術性」
 AIに変わられる職種として、店舗要員の販売員やレジ係、倉庫要員の入・出荷業務、バイイング業務の受注・発注業務は、AIロボットが代行するようになります。では職を失わないようにするにはどうしたら良いでしょうか。AIへ代替困難な職種は

・ アーティスト-----プロデューサー、脚本家、作曲家
・ クリエイター-----芸術家、デザイナー
・ キャスト---------俳優、役者

などと言われています。このように考えますと
・ 経営者はお客様の幸福物語を創作する、総責任者としてプロデューサー
・ バイヤーはお客様の幸福物語りの筋書きを創る、脚本家のシナリオライター
・ 店長は幸福物語りの劇場化を図る、舞台と演出を設定する現場監督のディレクター
・ 販売員はお客様と幸福物語りを演じる脇役、キャストと言えましょう。
A  Iロボットに職を奪われないために、スタッフ全員のアーティスト化が求められますね。



4 現場はロボットに負けない接客力を持つ
① 経験を売る
 お客様の感情を揺さぶらない売り方なら、AIロボット販売員で充分です。そうでなくても単なるモノ売りは、低価格化を進めます。靴・バッグ販売員が低価格品を売りたがるのは、未体験の商品を売っているから、使ったことの無い商品は説得力を欠き、どうしてもウソが入ります。店で扱っている商品は、出切るだけ体験すること、体験できない商品は、買っていただいたお客様から経験談をお聞きして、接客時に活用しましょう。

② 心動かして売る
 販売員は商品に対して、強い思い入れを語らなくては、お客様の心を動かせません。言葉には魂(言霊)が籠っています。お客様にとって価値ある商品である商品物語、お客様をヒーロー・ヒロインに変えるブランド物語を、自らの言葉で表現しましょう。物語の無い商品は単なるモノ売りのAIロボット販売員は、お客様の心を動かせません。

③ 世界観を売る
 世界観とは、店は「どんな幸せを売るのか」、販売員は「お客様だけの幸せ」提案するのが、AI時代の売り方です。世界観のテーマとは、お客様の幸せな「ライフスタイル」型なのか、お客様の幸福ドラマを組む「ストーリー」型なのか。いずれにしても商品・売場・接客に関連商品を扱う、業態型への転換が望まれます。靴専門、バッグ専門の業種型で、世界観を語るのは困難ですし、便利を売るのならAIロボットで充分です。「幸せ世界観売り」は人間でなければ表現困難だからです。

④ 共感を売る
 工業社会での販売員しお客様の関係は、BtoBのビジネス関係でした。損得関係の強いBtoBは、お客様から支持を得られません。ところがIT社会の今日はBtoSへ移行させました。お客様とサポーターの関係です。サポーターとは、Jリーグのサッカーチームを応援する支援者のことです。これから来るAI社会は、FtoFへ移行して店とお客様の関係を、ファミリー(家族)へ変えるでしょう。店はお客様との共感社会が到来したのです。

⑤ オンリー・ワンを売る
 ITとAI社会は超情報過多時代です。どこにでも有るモノは埋没して、誰も振り向きません。商品のオンリー・ワン化が困難でしたら、店名・販売員名を売り込みたいもの。オンリー・ワンで検索ツールのトップに立てば、全世界から注目され仕事が入ります。 



5 「幸福接客」へシフトさせて売上増を量る
 いま消費が冷え込んでいるのは、「モノ売り」に終始した「会話」を交わしているからです。「会話」とはモノを売り込む時、誰にでも話す共通語です。しかしモノ在庫は店・問屋・家庭内在庫で満杯です。その上ネット通販の発達で「何処にもある」「何時も買える」「安い」で、モノ欲求は激減しました。「モノ売り会話」はお客様の心を冷やすだけです。

これからは「対話」を駆使して、お客様の心を揺さぶりたいもの。「対話」とは親しい間柄だけに交わす言葉。接客言葉も「お孫さん可愛い盛りでしょう」とか、「家族全員でグランピングを楽しみ方」など、「幸福物語」の接客展開が臨まれます。「モノ欲求」は満杯ですが、「幸福欲求」は無限です。お客様との「対話」を弾ませて、お客様の心を熱くさせれば、売上高も無限なのです。
 


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