水飼 茂の経営提言 (2015年1月14日掲載)


アベノミクス崩壊に備える経営戦略


12月末※2014年の日経平均株価は、日米欧の金融政策への安心感から連日の大幅高を記録しました。しかし世界経済の新たな火種は次から次へ浮上、見渡せば世界経済はリスクの海に漂っている、危険極まりない状態にあると言えましょう。

1 リスクの海に漂う世界経済

(1) つまずく欧州、他国経済に飛び火?
 欧州連合の経済力の弱さが表面化しました。各国中央銀行のマネー供給もデフレの波を止められず、欧州中央銀行はついにマイナス金利を発動しました。しかもイタリアとフランスに財政危機が迫りつつあります。欧州連合は両国に財政赤字を削減するよう要請しましたが、イタリア・フランス両国は財政規模が大きすぎて、コントロールできないのが悩みの種です。

 南欧の屋台骨を支えてきたドイツ経済も深刻です。南欧の不良債権を抱え込んでいるドイツは、国内産業への融資は細り勝ちで、ドイツの経済指標はこのところ冴えません。第2四半期はマイナス、第3・4四半期はゼロ成長でした。ドイツはユーロ圏の構造不況で輸出減に陥り、活路を求めて中国に接近中です。

(2) 激震走る中国経済
 世界経済を牽引する中国に暗雲が広がっています。習近平国家主席による共産党幹部への粛清政治が、エスカレートしているからです。背景にあるのは共産党幹部の汚職による不正蓄財と、非効率経済の拡大による格差社会。その不満が群体性事件を発生させ、暴動が1日500件、年間18万件も起きていると中国政府が発表しています。

 汚職官僚の逆恨みで、習近平国家主席の暗殺が囁かれています。万が一原因不慮の事故死が起きようものなら、暴動が革命に変わり、内部抗争による共産政権は崩壊するでしょう。中国クラッシュは海外マネーの引き上げを起こし、世界の工場は中国から脱出して、日経平均株価を6千円台へ暴落させるでしょう。

(3) 命綱を失った韓国
 お隣の韓国経済も深刻です。頼りにしていた中国は、不動産バブルの崩壊と輸出不振で、経済が失速中です。その煽りをモロに受けて対中国輸出は、4ヶ月間減少を続けました。韓国経済の対外依存度は100%、その内中国は1/4を占めています。9月に発表された第2四半期のGDPは前年比0.4%減と低迷しました。

 対日強硬策で得たものは韓国経済の長期低迷。サムスンは発展途上国の低価格スマホとの競争で失速、ヒュンダイも米国での燃費過大表示と品質低下で、車の販売は失速しました。韓国GDPの36%を占める両社の不振は、韓国経済を直撃中です。韓国は反日に熱を上げているどころではない状態なのです。

(4) 危機迫るロシア経済
 ロシアの通貨ルーブル安が止まりません。ウクライナ危機による対ロシア制裁で、欧米からの資金調達が困難になった上、主輸出品の原油の値下がりと、投資環境の不安要因が浮上して急激な通貨安を招きました。プーチン首相は「対外的要因によるもので心配はない」と述べていますが、ロシアのGDPは日本の43%程度、ロシアの実力から見ればそんな甘いものではありません。

 欧州危機の発端となったギリシャの政府債務残高はたかだか55兆円でした。日本の16分の1に過ぎないギリシャ国債の下落が、金融システムを通じて他国へ飛び火、南欧4カ国526兆円の国債下落につながりました。ロシアはギリシャより規模が大きいので、ロシア経済の破綻は欧州経済を震撼させる、引き金になるやも知れません。

(5) 頼みの米国経済は砂上の楼閣
 雇用回復、新車発売、クリスマス商戦好調に沸く米国経済も、多くの信用リスクを抱えています。戦争国家米国は戦争でボロ儲けできない時代が到来しました。IT(情報技術)革命はスノーデン事件のように、CIAの情報隠蔽を困難にさせ、戦争を仕掛けたくてもバレてしまう時代を到来させたのです。米国は戦争国家を放棄し金融国家をめざし、人為的にバブルを起こさなければならない国へ成り下がりました。

 現在米国では、エネルギー関連企業の信用リスクが拡大中です。信用力の低い企業向けの「レバレッジド・ローン」による信用緩和や、ローン担保証券(CLO)の発行が増えています。まだ低格付け社債の発行残高は、サブプライム危機当時と比べると低いものの、強欲金融資本による暴走が、密かに囁かれています。


2.アベノミクスのワーストシナリオの行方
(1) 資本主義社会の終焉
 IT革命はマネー消失革命です。これは従来のマーケットを拡大させた産業革命と、構造的に異なる産業革命です。インターネットの進展による情報公開は価格破壊を進め、物価を際限なく下げ続けます。モノの価値を下げる経済行為は、製造現場・流通現場・販売現場の不動産価格を下げ続け、お金と情報価値は次第にゼロへ近付くでしょう。

物価と地価を無くす革命は、モノとトチがお金を生む、カネがカネを増やすマネー資本主義社会を成立させません。これから金融市場が儲けるためには、顧客を騙すほか道はありません。証券・銀行間で不祥事が相次ぐのは、ここに原因があります。あなたがもし自分だけが儲けられればいい考え方を持てば、金融暴走のツケがあなたに降りかかるかも知れません。

(2) 最大の誤算は貿易赤字
 お札をジャブジャブ発行して円安に振っても、日本にはもう輸出するモノがありません。2014年上半期の貿易赤字は過去最大の5.4兆円に達しました。対ドルで4割弱の超円安でも、輸出増はごく僅かしかありません。円安=輸出増・輸入減と言う、貿易収支改善の経験則が効かないのです。原因は製造業の海外移転と、供給過多による需給ギャップの拡がりです。

 黒田はインフレにするためには「何でもやる」と、あくなき利益を追求する強欲経団連に呼応して、大胆な金融緩和を続けています。安倍と黒田の発想は、米国出身の古典的経済学者ミルトン・フリードマンの、「物価は貨幣供給量で決まる」説によるものです。「物価は需要と供給量」で決まるのに、余りにも馬鹿げた政策です。そのいい加減さに株式市場と今回の総選挙が反応しました。

(3) アベノミクス第4の矢は「軍事大国化」
 アヘノミクス第1の矢「大胆な金融緩和」は、悪い円安で国内産業の業績悪化と輸入価格の上昇を招きました。第2の矢「機動的な財政出動」の効果は長続きせず、需要は低迷を続けています。第3の矢「民間投資を引き出す成長戦略」にしても、TPP加入や規制改革により、逆にデフレを加速させるでしょう。平和が続く社会でインフレにしたかったら、鎖国をするほか道は無いのです。

 3本の矢すべての的を外した安倍政権は、切り札として「軍事大国化」への道を選びました。平和国家から戦争の出来る国への転換です。集団的自衛権・武器輸出三原則の見直しをし、世界の最高技術を誇る日本の武器を輸出して、荒稼ぎしようとする魂胆です。日本の軍事予算は世界の第5位ですが兵器の質は世界一、米国の戦闘機のコックピットの電子部品は日本製ですし、潜水艦・戦車の性能も世界一。中国とロシアの軍事恐喝にさらされている国々は、日本の武器が欲しくて仕方がありません。人殺し戦争に加担し、強欲金融大国米国に追従するアベノミクスに、日本の未来はありません。


3.アベノミクス崩壊に備える経営戦略

(1) 最強の戦略は自律・自尊経営
 ITは人類200億年の歴史の中で、かつて経験したことのない未曾有な産業革命です。今までの革命は成長を続けた革命でしたが、今回は停滞・下降を続ける革命です。豊かさを求めた結果、人心の荒廃を招き、このままでは人類そのものが絶滅危惧種になりかねません。これを改める産業革命がITなのです。無理な成長路線を取れば、破局的な想定外の事態を引き起こすでしょう。

 先ずは経営面での自律です。資金を他者に依存しない、自己資本比率は50%以上を目指し、無借金経営を心掛けます。新たな投資は自己資金の範囲内に止め、投資先は「知」と「楽」に集中させます。次にモノ・トチに依存しないこと。これから在庫商品と不動産価値は、ゼロに近付くからです。特に在庫は過剰に持てば即・廃棄に追い込まれ、経営破綻を招くでしょう。保有不動産も最小限に止めましょう。これから地価は百万都市しか存在しません。シンプルライフ社会はシンプルビジネスが基本なのです。

(2) 営業面での自立は「オンリー・ワン」
 IT時代は過酷な競合社会です。国内の業種・業態、世界の業種・業態との壮絶な戦いが始まります。こうした社会では何処にもある、いつもある商品は、価格破壊で疲弊の一途を辿るでしょう。工業時代は大量消費を前提にしたマス・マーケット社会でしたが、IT時代は省創費(エコ前提として新しい需要を起こす)をテーマにした、コンセプチュアル・マーケットなのです。

「オンリー・ワン」を目指すとなれば、SPA企業へ指向しなければなりません。小売店はメーカーや問屋のブランドに依存せず自ら作る。メーカー・卸は小売店をアテにせず自ら売る、垂直統合型営業が望まれます。理由はIT時代の情報は川下が持つからです。顧客に近いところで商品・サービスの企画を立てなければ、情報分断による壮大な廃棄ロスに見舞われるでしょう。

(3) メディア面の自立も図る
 メディアとは自社とお客様の接点になる、企業サイト・販促・店舗・販売員などを指します。メディアにはペイド(有料)メディアと、オウンド(自社)メディアとがあります。今まで小売ビジネスは、ショッピング・センターや楽天市場にテナント出店して有料広告で集客をする、ペイドメディアを中心として展開をして来ました。ところがペイドメディアは下層客を集めるため、価格破壊と浮動客に悩ませられ、売上げ不振に追い込まれるようになったのです。

 そこで注目されたのがオウンドメディアです。店舗は自前で出店、商品も自主企画、販促は自社のコーポレイトサイトやメルマガ、ブログなどを駆使して顧客とのロイヤリティを高め、CRM(カスタマー・リレイションシップ・マネジメント=顧客関係強化経営)や、CHM(カスタマー・ハピネス・マネジメント=顧客幸福経営)を構築しようとする高まりです。IT時代は何が何時、どんな事件が起きるか想像もつかない時代。このような社会は、誰にも頼らない自律・自尊の精神が問われるのです。

(4) IT時代は人財力がすべてを制する社会
 工業時代はワーカーとビジネスマンの社会で、能力差と給与差の少ない平等社会でした。ところがIT時代は、エンターテイメントとインテリジェンスが求められる格差社会です。平等社会はやってもやらなくても給料は同じ、固定賃金制で間に合いました。しかし「楽」と「知」の能力差が開くIT時代は、平等評価を行うと低生産性を招きます。

 こうした中で浮上したのが人財力強化です。だいたい人を材料視する「人材」という言葉は、働く人にとって失礼そのものです。「人材」と見るから仕事をやったフリをしている「人在」と、仕事をしている仲間の足を引っ張る「人罪」が発生します。人を財産と捉え教育を行い、能力を高めて公平評価に変えれば、人の能力は無限なだけに企業の業績は無限大に伸ばせられるでしょう。



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