水飼 茂の経営提言 (2012年7月31日掲載)

デジタルマーケティング時代の営業戦略 Ⅲ

靴専門店の基本戦略は「顧客幸福化経営」

IT時代からICT時代へ
 最近はICT時代と言われています。IT(Information Technology)とは、情報科学技術の略ですが、ITC(Information and Communication Technology)は情報意思伝達科学技術を意味します。コミュニケーションを中心としたマーケティング活動のことを指します。供給過多が進む中で需要は減り続ける熾烈な競走時代は、顧客と濃密なコミュニケーションを交しながら、商品開発・流通・販売を行わなければ、生残れない時代が到来したからです。


激変する顧客とのコミュニケーション
 工業社会で盛んに言われたのがCS(顧客満足経営)てした。顧客第一主義と言った考え方です。ところが競合が激化するにつれ、CRM(顧客良好関係構築経営)へ変りました。顧客のデーターベースを基にして、様々なサービスを提供するシステムで、ポイントカードやマイレージサービスなどで顧客を囲い込む戦略です。ところがこれも効き目がなくなりました。ある日突然に優良顧客が消えてしまう事態が起きるからです。顧客はもう一律バーゲンをする「平等サービス」に飽きて、買うほどお得になる「公平」サービスさえも、顧客の心を繫ぎ止められない時代が来ました。


経営戦略の柱をフェアトレード(公正取引)になる
 人類の基本的欲求は幸せの共有です。モノを買う行為も「安い」から「お得」へ、更に「嬉しい」へ変りました。これは買う本人が「嬉しい」だけでなく、供給側の生産者、流通業者全体にとっても「有りがたい」方向です。つまり「フェアトレード=公正な取引関係」が求められる時代が到来しました。大手量販衣料や百円均一ショップが安売りする影で、多くの関係者が「貧しい労働を強いられている事実は許せない」動きの高まりです。これは顧客とのコミュニケーションを劇的に変えるでしょう。今までのTVCMや新聞広告、チラシなどの一方通行型告知は信用できない。何かインチキ臭いと嗅ぎ分ける感性が、顧客側に芽生え始めました。お金を払って宣伝するペイドメディア(有料広告媒体)の効果が年々低下しているのはこのためです。


オウンドメディアの主役は店舗
 オウンドメディアとは他社にお金を払って宣伝して貰うのでなく、自社が宣伝主体となって、顧客と直接的な関係を創ると言う意味です。顧客と双方向コミュニケーションを図り、BtoBをBtoS(企業とサポーター)へ、更にFtoF(家族と家族)の間柄を構築しようとする試みです。ICT時代のオウンドメディアとは、電子メディアであるHP、ブログ、メールマガジン、フェイスブックなどと、従来のアナログメディアである店舗、接客、サービスコールなどの総称を指します。

 ITC時代は過酷な競合時代です。デジタルとアナログのあらゆるメディアを駆使して、顧客とのコミュニケーションを図らなければ埋没しかねません。これからのメディア戦略の基本はフェアトレード(公正取引)と、インタラクティブ(双方向通信)です。これを外した行為は顧客との信頼は得られませんし、信頼なき取引は壮絶な価格破壊を進め、社会の荒廃を進めるでしょう。

 オウンドメディアの主役はリアルメディアの店舗です。店は劇場、売場は舞台、お客様はヒーロー&ヒロイン、販売員はお客様を素敵に変える脇役、接客はドラマです。ドラマタイジング営業でお客様を感動させ、お買上げ後のサービコールでお買上げ商品のアフターフォローで感激をさせます。お客様へ売りっ放しではなく、お売りした商品を何時までも忘れない心遣いが、お客様をお得意様へ変えるのです。


脇役電子メディアの役割
 オウンドメディア時代の電子メディアは脇役です。電子メディアにはHP、ブログ、メール、メールマガジン、フェイスブックなどがありますが、その役割を述べてみましょう。

 HP(ホームページ)は経営者が事業に取り組む姿勢を明確にする場で、企業理念、社長の経営哲学など、社会を幸せに変えるコミットメント(公約)を載せる場でもあります。社長ブログはCHM(カスタマー・ハピネス・マネジメント=顧客幸福化経営)に取り組む具体例を話し、社員ブログはCHMに基づいた商品・売場・売り方の営業実務日誌と言えるでしょう。

 メールやメールマガジンは、お買上げいただいたお客様を感激させ、お得意様へ変える電子DMの役割を果します。一律メールや一律メールマガジンは、受ける側のお客様にとって迷惑千番、全く効果がありません。

 これからの電子メディアの主流はフェイスブックです。HPと違って敷居が低いカジュアルなコミュニケーションの場なので話が弾みます。しかもターゲットは自店のお得意様に限定出来るなど、多くの利点があります。一番のメリットはお得意様同士の自発的対話から、潜在的なウォンツが聞けること。ニーズはデータを分析すれば把握できますが、ウォンツは中々探れない。私どもの顧問先企業の話では、ヒット商品はフェイスブック上のお客様同士の井戸端会議から生まれるそうです。


成功戦略は店舗⇔電子メディア
 靴専門店の営業基本戦略は、店舗での感動接客で顧客をお得意様へ変え、お得意様へ電子メディアのHP、ブログ、メール、フェイスブックで感激させ、ファンにする「店舗⇔電子メディア」と、電子メディアで見た観客を実店舗へ誘導して顧客へ変える、「電子メディア⇔店舗」の二方向があります。何れにしてオゥンドメディアを総動員して、顧客との「絆」を深めるメディアMIX戦略が、これからの靴専門店の営業基本戦略と言えましょう。





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