靴マーケティング最新レポート

2021年4月9日

全世帯の消費支出は15ヶ月間咋対割れ
(財)日本統計協会の家計調査報告の最新レポートによれば、勤労者の収入は2019年度から2020年4月まではプラスマイナスほぼゼロ、2020年度5月から7月3ケ月間は12%と大幅プラスを記録した後、11月から失速マイナスへ移行した。一方消費支出は2019年10年からマイナスへ転じた。2021年度春のコロナ禍でマイナス傾向が続くと思われる。秋冬にはコロナ禍が終息すると思われるので、今後の消費動向から目が離せない。


勤労者世帯の実収入の推移



消費支出の推移



主要品目別前年対比増減率(2021年1月)
項  目 当月指数(金額)  対前年同月比 概要
 食   料     74,250円      △2.2% 外食、菓子類減
 住   居    15,448円    △5.5% 設備修繕・維持費減
 水道・光熱     25,398円  5.5% 電気代・光熱費増
 家具・家事    11,419円
  17.3% 家庭用耐久財増
 被服・履物  8,769円
        △17.3% 洋服・シャツ・セーター減
 保険 医療  12,995円    △5.9% 保険医療サービス減
 交通 通信  39,906円      △3.5% 交通・通信費減
 教   育  7,870円       2.9% 授業料、教科書など減
 教養 娯楽  22,414円      △20.3% 教育娯楽サービス品減


不振を続ける靴・履物類の消費支出
靴・履物類の消費支出は、全消費支出がプラスを続けているのに反して、一昨年2017年度の靴・履物類の年間通算伸び率は97.7%と不調だった。2018年の通算伸び率は98%、2019年6月までの通算伸び率は99.5%と昨年割れだった。2020年2月のコロナ禍で全部門が大幅減を記録した。6月からやや回復しつつあるものの、相変わらず消費減は続いている。コロナ禍が何時終息するか予断を許さない。



履物類品目別消費金額前年対比増減率

 年 月 運動靴   男子靴   婦人靴   子供靴※  その他を含む計
 2020年1月  70.4   64.4   85.5     93.3
2月  61.9  94.4  94.1  310.3  95.1
 3月  54.2  80.8  70.1  247.9  77.2
 4月  27.5  41.1  25.6  121.8  40.0
5月 43.4  38.8  42.6  233.0  59.2
 6月  118.3  102.7 96.0  95.3  94.7
7月  90.0  91.8  98.8  95.3  94.7
8月  65.3  102.6  83.3  341.2  91.9
 9月  38.7  56.1  59.3  310.1  63.5
 10月  108.2  104.9  99.3  134.5  103.6
 11月  67.2  105.1  84.1  165.7  86.2
 12月  82.3  73.9  66.7 223.5  83.8
 2020年通算  69.0  79.7  75.5    81.9
※子供靴は分類基準が変更されたので前年対比率は正確ではありません



 商品部門別昨年対比表 2021年~2020年

 拡大図(pdfが立ち上がります)  左欄は平成2021年、右欄は平成2020年度


靴専門店現場情報

 2017年は安倍バブルによる好況によって、モダン・スポーティブ感覚が強まり、2019年度は全体にカジュアル化を進め、中でもスニーカーが絶好調だった。同時にシューズのスニーカー化、サンダルのカジュアル化、低寸のカジュアルパンプス化を進め、その結果靴専門店は単価ダウンが拡大、大きな売上減に見舞われた。レディスは2020年後半期は昨対78と、
2018年以来低迷を続けている。

メンズもレディス同様カジュアル化とスニーカー化を進めたが、レディス程単価ダウンは起きなかったものの、2020年は昨対83と低迷した。一方スニーカー部門はモダン・スポーティブ感覚が拡大して、2019年後半期は4年連続昨対を上回り%、118%と絶好調だったが、2020年コロナ禍により大幅ダウン、通算昨対73%と激減した。コロナワクチンによる終息の見通しが立ちつつあるので、コロナ終息後消費のV字型回復が期待される。



アフターコロナに備える秋冬の営業戦略


この秋冬の最大の焦点はコロナ禍の終息時にある。コロナ後の景気はV字型回復基調を取ると考えられるので、アクティブスポーツ感覚が強まる。直近1月の靴専門店の売上高は、婦人靴は昨対78%で、靴専門店にとって苦難が続いている。景況回復が早まるほど、シューズからスニーカーへ、エレガンスからカジュアルへ移行して単価ダウンを進め、売上減に見舞われているからだ。スニーカーの売上平均単価は7千円なのに比べて、シューズは1万円超、ブーツは2万円以上で、スニーカー単価は大幅ダウンになる。単価ダウンによる売上げ減を食い止めるには、高品質・高価格カジュアルを品揃えの柱にする他に道はない。

メンズもカジュアル化へ移行して、アメリカンカジュアルが急拡大、売上全体の半数近くをカジュアル靴で占めるようになった。カジュアル化によるメンズ靴低迷から脱却するには、高品質・高価格のアウトドアアイテムの投入が欠かせない。レッドウィングやウルヴァリンなど名門メーカーを集めて、売上げ増を図りたいものである。しかしアウトドア商品だけ投入しても、売上には結び付き難い。好況を売上げ増の追い風にするには、売場・陳列・売り方に臨場感が求められる。高価格化よってメンズシューズ部門の売上浮上を図りたい。トラッド化とアメカジ化はシルエットはタイトからむラウンドヘ、ソールはマッケーからグッドイヤーへ、全体にがっちり感覚が求められるようになるだろう。

アベノミクス効果はスニーカー需要に大きく貢献した。NBのランニング、コンバースのオールスターが大ヒットして、靴量販チェーンのABCマートの業績は絶好調だった半面、シューズ主体の靴専門店は苦戦を強いられた。そこでスニーカーのシューズ化を進めよう。シューズアッパー×スニーカーソールの、ハイブリッドアイテムが注目される。シューズ化によってスニーカーの単価アップを進め、シューズのアウトドア部門との相乗効果で売上高増が期待される。注目されるのは90年バブル時のハイテクブームである。これからハイテクブームの復活が予想される。ハイテク化の流れは早くも2021年春の商品情報で、ナイキやフィラ、アシックスのハイテクディテールが登場している。この秋冬は更にインパクトの強い、ハイテクモデルがお目見えするだろう。スニーカーの各カテゴリー毎にハイテクディテールに注目して、トレンド・高品質品を提案して更なる業績アップを図りたいものである。







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